奈落の果てで、笑った君を。
「これからたくさん走ることが増えるだろうから、今のうちにと思ってさ」
すごく走りやすそうだと、わたしも身につけてみてまず最初に思った。
「形は西洋風にしてあるんだって。格好いいでしょー」
「わたしにくれるの?」
「そう。俺からの贈り物」
「ありがと桂っ!!今日からずっと履く!」
座りながらもトントンと足踏み。
それだけで嬉しそうにはにかんだ桂は、そのままわたしの頭を撫でてきた。
「…この笑顔を守るためなら、敗者でもいいんだよ俺たちは」
「え…?」
「朱花、きっと近いうち戦が始まる。だとしても…朱花だけはずっと笑ってて」
それだけでいいと、桂は言う。
わたしの笑顔そのものが見廻組だと、言う。
「うんっ」
わたしにはアイキョがある。
わたしの笑顔は誰かを救うことができる。
この京の都に来る前、出会った人たちに言われた言葉だ。
「桂、桂って格好いいね!」
「………はい?」
「格好いい!」
「…顔ってことかい?まあ良く言われはするよねー」