奈落の果てで、笑った君を。
殺気を放つそれから手を離した青年は、どこか先ほどとは打って変わって表情を和らげた。
「よしわかった。お前はここじゃなく、二条のほうへ行けって」
「ニジョ?」
「そうそう二条。わかんなかったら人に聞いてやり過ごせよ?お前ならなんか……たどり着きそうだし」
あ…、このひと、悪い人じゃない。
それは今まで出会った人間たちと同じ匂いを感じたからだ。
「組長、本当に良いんですか?二条というと…見廻組ってこと、ですよね?」
「ああ。あいつらは普段からオレたち新撰組を見下してんだから。たまには贈り物、届けてやろーぜ」
皮肉が込められた会話を理解することなくじっと見つめていると、空気を変えた青年にポンポンと肩を叩かれる。
「いいか、二条な。もうここの三条付近には来るんじゃねーぞ」
「そこのニジョには何があるの?」
「んー、あ!この羽織と刀がたくさん売ってるんだ。よかったな、名無しの権兵衛」
「うん!おせわになりました」
「……これは罪悪感を感じたら負けだわ」