奈落の果てで、笑った君を。
「…今の、尚晴に直接伝えないの?」
「それはなんか、恥ずかしい。でも蹴っちゃったことくらいは謝っておかなきゃかなー」
「え、蹴ったの?」
「うん」
「なんでっ!わたしも蹴る!」
「逆になんでだクソガキ。仕返しは絶対してはいけませーん」
ひとつ、ひとつ、時間は過ぎてゆくから。
毎日、毎日を、大切に生きることがすべて。
誰だってきっと、楽しい時間を感じるたびに、そしてだんだん終わりというものが近づいてくることを考えるたびに。
時間が止まればいいのに…って、願ってしまう。
どうして時間は止まらないんだって当たってしまいたくもなる。
でも果たして本当に時間が止まってしまったなら。
1秒1秒に感じる奇跡を、幸せを、苦しみを、逸らさず見つめることはできないだろう。
その尊さを実感することも、誰かと分け合うことだって、できなくなるだろう。
ねえ、そうやって。
そうやって綺麗なことだけを並べて強がることは、正しいでしょう?
「おい、聞いたか?御陵衛士、全滅したってよ」
「ああ。どうにも近藤 勇を暗殺するだの話が出てたところを、新撰組が先回りして潰したんだと」
「すげえな…、誰か間者にでも仕込んでたってことか?」
「噂では斎藤 一を送り込んでたらしいぜ」