奈落の果てで、笑った君を。




それからまた数日が経った、12月のこと。

ある夜、ずっと大切にしていた風車が壊れてしまった。


ペキッと、竹の部分から花びらが落ちるよに。



「───朱花」



また会うって約束したよ。
いつでも会えるって、言ってた。


壊れた風車を握って、縁側に座る。

見上げた青空は端に白い雲があって、それはわたしがずっと欲しかった羽織のようだった。



「もう……会えないんだね。リョーマにも、へーすけにも」



手を伸ばしてみても、その青すぎる浅葱色には届かない。


約束したのに。

その約束は、もっともっと遠くに行ってしまった。



「───…浅葱色の……約束、」


「…朱花?」


「わたしには…、叶えられなかったなあ…」


「…会える。いつか…必ずまた会える」



隣に座った尚晴に、そっと肩を引き寄せられる。


悲しいのか、切ないのか、虚しいのか。

自分の気持ちが分からないなかでも、心にぽっかりと穴が空いてしまっていた。



「少しだけ…背が伸びた気がするな」


「わたし…?」


「ああ。顔立ちも、出会った頃より大人びたように思う」



そう言われて単純に“うれしい”、だけでなく。

気をつかってくれているんだろうな、元気づけてくれているんだろうな、って。


そんなふうに思うようになった。



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