奈落の果てで、笑った君を。
「おいっ、見廻組!!頭(かしら)を出せ!!」
「ちょっ、誰なんだあんたらは…!!」
「いいから頭を出せと言っておる!!斬られたいのか…!!」
「身元も分からねえ奴を簡単に入れるわけにいくか…!帰れ!!」
門の前が騒がしい。
何人かの男たちが入らせないように止めているっぽいけれど、今日はやっと只三郎が帰宅した日なのだ。
せめて少しでもゆっくりさせてやりたいというみんなの労りは、こうも簡単にへし折られてしまいそうだった。
「だれ…?しょうせい、尚晴…!」
部屋でひとり折り紙を折っていたわたしは、とたんに襲ってきた感情から、その名前を繰り返す。
屯所内では只三郎を呼ぶ声や、ノブちゃんのいつもとは想像もつかない静かな声、周りに命令を下す桂の声。
たくさんの声が行き交うなか、わたしも思わず腰を上げようとしたところで襖が細く開いた。
「尚晴っ」
「大丈夫だ、こちらへ来い」
わたしの腕を引いて、屯所の奥へ連れていく。