奈落の果てで、笑った君を。
そこは門からいちばん遠い場所。
通りかかる人間でさえ目に入らないような、物置小屋。
「我々は尾張(おわり)藩の者だ!幕府から命を受け、ここに匿われている娘の捕縛に参った!!」
ドキンっっと、今まで無かったくらいに心臓が跳ねた。
それが誰のことなど考えなくても分かる。
ここに匿われている女はわたししか居なければ、幕府から命が下るほどの存在だってわたしくらいだ。
とうとうわたしのことが公に出てしまったのだと、だからわざわざここまでやって来たんだと。
「はやく娘を出さぬか…!!そいつは化け物の子だ、すぐに排除せねばならん!!」
ほら、確信だった。
そのことを知っているのは尚晴だけだ。
わたしのなかに、捕らえられることに対する不安以上の大きな恐れが襲ってくる。
「みんな、みんなに知られちゃう…っ」
「大丈夫だ。俺が必ず守る」
「尚晴っ、しょうせいっ」