奈落の果てで、笑った君を。
ぎゅうっと、その胸に顔を埋める。
戦が始まること、大砲や銃声の音が聞こえてくること、こうして知られたくないことを知られてしまうこと。
こんなにも、こんなにも、心がざわつく感情を知る日がくるなんて。
「化け物の子…、───そんな者は、ここにはいません」
まっすぐ言い放たれた只三郎の声は、わたしのもとにまで届いてきた。
尚晴の腕のなか、震える身体をどうにか静めて耳をすませてみる。
「門を叩き、戸を叩き、こちらの声には一切耳にも目もくれず、化け物の子だと?排除だと?
それが武士のすることなのですか。野蛮な真似は辞めなさい」
聞いたことがないくらいの低い声だった。
すごく怒っているんだろうな…と、単調にも思えてしまう。
どうしてそんなに落ち着いているの?
どうして驚かないの?
ふるっと、唇が震える。
今にも向かいたい衝動に駆られるけど、それはまだ危険すぎるから。