奈落の果てで、笑った君を。
くるっと身体の向きを変えて、さっそく走る。
「でもまずは草履買えよー?」と、声だけが追いかけてきた。
おせわになりました、じゃない。
こういうときは、ありがと、だ。
「ありがと!あっ、そちらさまの名前はー?」
「───オレは藤堂 平助(とうどう へいすけ)。よーく覚えとけ!!」
「うんっ」
しんせんぐみ、みまわりぐみ、ニジョ、サンジョ、へーすけ。
また新しいことを知った幸福に、青空を仰ぎながら地面をめいっぱい蹴る。
「おっと堪忍な。…って、うわ汚ェ!!」
「わっ」
それから二条と呼ばれる町へ来たものの。
なんだか心が落ち着かなかった。
今もキョロキョロと歩いていたせいか、ドンッと清楚な身なりをした男にぶつかってしまい。
「袴が汚れたやろ!謝れや!!」
「え、あっ、おせわになりました」
「ちゃうわ!!ごめんなさいやろ!!」
「ご、ごめんな、さい?」
「ったく。お前みたいな奴が地上を歩いちゃならんのや」