奈落の果てで、笑った君を。




そんなことを考えながら一緒に歩く道は、どこに繋がっているのか分からなかった。



「朱花、俺からの草履は大切にするんだよ」


「うんっ!宝物!」


「…俺はふたりとの思い出を貰ってくから」



切なそうに微笑んだ桂。

戦というものは、笑顔のひとつひとつを寂しく映してくれるのだと。


パァンッ!パァン───!


近いのか、遠いのか、それすら分からない銃声が聞こえてくる。



「……ごめん、ふたりとも」


「桂…?」



目の前から影が見えてくる。

数人がこちらへ向かってきているようで、桂はわたしたちを庇うように前に立って足を止めた。



「実を言うと、ここは新政府軍の野営地に近い場所だったりして」


「え…?」



あれは……敵…?

銃をわたしたちに向けてきている。


「そこの者ども…!止まれ!!」と、何人かの怒号が響いた。


それでも驚くことせず、怯えもせず、わたしと尚晴に説明をする桂は。



「…けど、そこの川。その川は越前まで直通の川でさ。……俺はそこに賭けた」


「はやのす───、っ!!」


「わあ…っ!?」



< 342 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop