奈落の果てで、笑った君を。
そんなことを考えながら一緒に歩く道は、どこに繋がっているのか分からなかった。
「朱花、俺からの草履は大切にするんだよ」
「うんっ!宝物!」
「…俺はふたりとの思い出を貰ってくから」
切なそうに微笑んだ桂。
戦というものは、笑顔のひとつひとつを寂しく映してくれるのだと。
パァンッ!パァン───!
近いのか、遠いのか、それすら分からない銃声が聞こえてくる。
「……ごめん、ふたりとも」
「桂…?」
目の前から影が見えてくる。
数人がこちらへ向かってきているようで、桂はわたしたちを庇うように前に立って足を止めた。
「実を言うと、ここは新政府軍の野営地に近い場所だったりして」
「え…?」
あれは……敵…?
銃をわたしたちに向けてきている。
「そこの者ども…!止まれ!!」と、何人かの怒号が響いた。
それでも驚くことせず、怯えもせず、わたしと尚晴に説明をする桂は。
「…けど、そこの川。その川は越前まで直通の川でさ。……俺はそこに賭けた」
「はやのす───、っ!!」
「わあ…っ!?」