奈落の果てで、笑った君を。
ドンッッッ!!!
わたしたちの身体は、そこまで激しく流れてはいない川へと突き落とされた。
「朱花……ッ!!」
斜面を勢いよく転げ落ちてゆく。
わたしの身体を咄嗟に掴んで守るように抱きしめる尚晴の腕のなか、どんどん離れてゆく桂へと首を伸ばした。
「こんな真冬の季節にごめん。尚晴、朱花」
桂のそばに立つ、銃を持った数人の男たち。
それでも気にせず、彼は骨格を優しく上げてわたしたちを見下ろした。
「─────……元気でね」
なにが起きているのか分からない。
どうしてわたしは山から落ちているんだろう。
どうして桂はわたしたちを突き落としたんだろう。
「なん、で……ッ」
流れてくる。
記憶のなか、初めて桂 早乃助という男と出会った日の思い出が。
まるでこれが、最後だと、教えてくれるみたいに。
こんなにも急に訪れる別れが、わたしに戦のやるせなさを全身に叩き込んできた。
「かつらぁーーー…っ!!!!」
パァンッ!パンッ…!!
川へと身が放り投げられる寸前、つんざく音がキィィンと鼓膜を突き破ってくる。
ザブンッッ!!!
尚晴に抱きしめられるまま、わたしたちは大きな水しぶきを上げた。
*