奈落の果てで、笑った君を。
早乃助side




「かつらぁーーー…っ!!!!」



仲間がふたり、川へと落ちていった。


あの川は浅い。
あの川はそこまで流れも激しくない。

この道を選んだことは、間違いではなかった。


ただ俺個人だけの人生として考えてしまったときは、母を泣かせてしまうかもしれないけれど。


流れていけ。
苦しみも、つらさも、恐怖も、後悔も。

ぜんぶぜんぶ、流れていけ。



「貴様…!どこの者だ…!!」


「そこを動くな…!!動いたら撃つぞ!!」



どちらにせよもう、引き返せない。


ここで背を向けて走ったとしても相手は銃だ。

このまま突っ走ったなら瞬時に引き金は引かれる。


だったら情けなく逃げるのではなく、最期まで見廻組として、武士として散っていこうじゃないか。


助けるべき仲間は、俺の精いっぱいで助けることができたのだから。



「あの者たちは誰だ…!なぜ川に突き落とした…!!」


「俺、本当であればいずれは実家の道場を継ぐ予定だったんですよ」


「は…?」


「あんなとこさっさと辞めて、普通に伴侶を持って普通に子供つくって、それなりの暮らしってやつ?
わりと稼いだし、親にもそろそろ帰るよーなんて言ってたりしてね」



< 344 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop