奈落の果てで、笑った君を。




「ぐッ…は、!!」


「佐々木さん……!!!」


「私のことは構うな…っ、いいから走りなさい……ッ!!」



生き抜け、生き抜け。
叫んだっていい、泣いたっていい、

ただ、走ることだけはやめるな。


これは今まででいちばん上出来な歌だよ、朱花。



「はっ、……は……、ずいぶん…人を斬ったの、だから……、これくらいの苦しみ、は……当然、です……ね」



温かい布団で眠ることが、できますように。

温かなご飯を食べることが、できますように。


尚晴と喧嘩はしないとは思うけれど、周りの声に泣かされはしませんように。


それだけがほんの少し、親として心配です。



「きみ……たち…は、……生きる、の、……です…」



教え足りなかったことはないだろうか。

私はちゃんと、君に教えることができただろうか。


挨拶をなさい、返事をなさい。

他人のしたこと、しなかったことでなく。
己のしたこと、しなかったことだけを見よ。


どんな苦境に立たされようと、決して足を止めてはなりません。


振り返ってはなりません。

それでももし、ふとしたとき、振り返ってしまったとしたならば。


そのときは必ず、戻らぬこと。



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