奈落の果てで、笑った君を。




たったふたりに対してこの人数を揃えられるというのなら、今もどこかで戦っている旧幕府軍に使うべきだ。



「朱花…っ、やめろッ!!朱花に触るな……!!!」


「しょうせい……っ」


「離せ…ッ、ぐは……ッ!!」


「尚晴…!!」



世の中は、なにが正しいのだろう。

誰かが死ぬことで繋がる平和とは、いったい何なのだろう。


どうして命の代償に、平穏があるのだろう。


敗者がいなければ勝敗は成り立たないと言うのなら。

わたしたちは、敗者なのか。



「おら、さっさと入れ」


「っ!」



ガシャン───、


ああ、そうだ、これだ。

希望をひとつも見ることができない暗い柵のなか。



「おい化け物の娘。良いことを教えてやろう」


「尚晴は…っ、尚晴はどこにいるの…!?無事なんだよね!?ねえ…!!」


「だァまれよコラ!!」


「うっ…!」



こうして少しでも反論すると棒で強く叩かれるの。

こんな場所でわたしは70年を生きていた。



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