奈落の果てで、笑った君を。
「見廻組は終わった。鳥羽・伏見は大敗、与頭の佐々木と桂っつう男が戦死したとの情報が入ってたぜ」
「─────……え……?」
この牢は、まだいい。
地下じゃない、真っ暗じゃない。
格子からせめてお月さまが眺められる。
ぜんぜん綺麗じゃない、お月さまが。
「……しん……だ……?」
「ああ。残念だったな」
そんなはずない。
死なないんだ、死ぬはずがないんだ。
……なんて、言える…?
『ふっ、あははっ。私を呼び捨てにし、可愛いなどと言える存在はそうそう居ませんよ』
『あ、俺?俺はねー、桂 早乃助さまで』
『まだ身体がぜんぜん熱いね。もう数年ばかしは、ここで様子を見ましょうか』
『朱花ってほんと忙しいよねー。って、それ俺の漬物だよクソガキ!!』
わらえ、笑え、わらえ、笑え。
温かで穏やかで、賑やかで、大好きだった。
『朱花はね、いま見ている世の中をしっかり見つめることだけをすれば良いのですよ』
『前に家茂公に似てるとか言ったの、あれ取り消すからね。朱花は朱花、それでいーんだよ』
わたしの存在を認めてくれた。
“生きていい”と、言ってくれた。
『化け物の子…、そんな者は、ここにはいません』
『この笑顔を守るためなら、敗者でもいいんだよ俺たちは』