奈落の果てで、笑った君を。
『桂が死ぬわけないもんっ!!』
『…本当にごめん。冷たかった?』
『え…?』
『……雪。外で遊んで来たんだろう?』
身体をそっと離すと、ふっと優しく伸びる眼差し。
ぽんぽんと、わたしの頭に乗ってなどいない雪を払うように撫でてくれた。
『向こうに佐々木さんもいるよ。みんなでご飯たべよう』
『只三郎…!!』
『わっ』
桂の腕を掴んで、そのまま只三郎のもとへ走る。
そうじゃないとまたいつ急に離れてしまうか分からないから。
今度は川じゃなく、井戸に落とされてしまうかもしれない。
『朱花、そんなに急いでどうしたのですか』
『っ、たださぶろう…っ』
いる、ちゃんとここに居る。
並べられている膳、穏やかに姿勢よく座っている与頭。
『変な夢見たの…!みんな死んじゃってね、そんなわけないのにねっ』
『…こちらへおいで、朱花』
すぐに向かう。
わたしの頬をそっと拭った只三郎は、泣きそうな顔で微笑んだ。
『またずいぶんと泥まみれだね』
『いっぱいいっぱい走ったの!』
『…さあ食べようか。きっとお腹も空かせているでしょう?』
『うんっ!』