奈落の果てで、笑った君を。




『よっ!元気にしてたか?』


『へーすけっ!!!』



それは、気づいたときには遠い彼方へと行ってしまったお友達だった。


風車を手にしてニッと意地悪に笑うへーすけは、ここが毛嫌いしていた見廻組の屯所だということを忘れているんじゃないかと思ってしまうほどの笑顔。



『へーすけが直してくれたの!?ありがとっ』


『っと、これはオレが預かっとくわ』


『どーしてっ!わたしの宝物なの!』



取り返そうとしてもスコッと避けられる。

へーすけは本当にわたしに風車を渡す気は無いみたいで、なぜか無理やり奪い返す気も起きなかった。


そんなへーすけは、浅葱色を羽織っていた。



『まっこと、賑やかな奴らじゃ』



そして縁側、ひとりの男が酒を飲んでいた。


よく分からないホーゲンという言葉。

水平線を見据えるような、屈託のない眼差し。



『リョーマ!!!』


『うおっ!酒がこぼれるき!』



リョーマ、怒らないで。

尚晴は、尚晴はね、本当はあんなことしたくなかったって、泣いてた。



< 383 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop