奈落の果てで、笑った君を。




だからまた会ってあげて…?

つぎ会ったとき、“友”って笑ってあげてくれるだけでいいの。



『あれがワシの道やった。やるべきことは果たせたがじゃ。悔いは……ないぜよ』



自分の最期を看取ってくれたのが尚晴で良かった───と、リョーマは太陽のように笑った。


揃うはずのない人間たちが揃っている。

はやく、はやく、尚晴も呼んでこなくちゃ。



『私たちはすべて、君たちに託したのです』


『只三郎…?』


『俺たちの未来を持って走れるのは…尚晴と朱花だけなんだから』


『桂…?』



ここには尚晴はいないの?

どんなにわたしが待っても、来ないの?




『────奈落の果てへ行け、朱花』




魂に届けてくる声だった。

只三郎、桂、組員たち、へーすけ、リョーマ。


まるで「まだ早い」と言われてしまったみたいに。


現実を見て、現実を受け入れろ。
まだ折れてはいない。

わたしたちが居るかぎり、終わりはない。


越えろ、越えろ。

地獄も奈落も越えて、その先へ行け。



『しょうせいっ、尚晴…!』



その奈落の果てで笑ってくれる君がいることを願って、わたしは走った───。



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