奈落の果てで、笑った君を。
「その娘は生きていてはならぬ存在なのだ」
生きていてはいけない存在…?
そんなものは誰が決めたんだ。
誰が決めていいんだよ、そんなこと。
「その娘が存在すること自体が徳川幕府に泥を塗り、皆を怯えさせ、恐怖に忌ましめる。その娘は妖怪に取りつかれた化け物なのだ」
言葉は痛いな…と思った。
刀は刺さったとしても抜けるが、言葉の剣は2度と抜けない。
それは目に見えるものではないから。
目に見えないから触れもしない。
目に見えないから、相手も次から次に平気で浴びせることができる。
「そんな娘を庇ったお前にも責任がある。よって、我々は死罪を命ずる」
法とは、なんだ。
罪とは、なんだ。
生きるために生まれてきた命を、生きなくさせることか。
あたかもそれを“自分の守るべきものを守るため”と都合の良い解釈をし、納得をして、俺たちを裁いたあとは、家族を守ったんだと自己満足に酔いしれ。
笑って生きていくんだろう、お前ら全員は。
「……、のか…」
「…なんだ?」
「身体いっぱいに風を受け止めて、手足を自由に動かして、笑って、話して、知らないことを知ることが……、そんなに…、そんなに許されないことなのか……!!!」