奈落の果てで、笑った君を。




「はあ…っ、はっ、朱花は……、1度たりとも自分が徳川の人間だとは…言わなかった、」



あんたらが勝手に来ただけだ。

そうでなければ別に、朱花は徳川の人間ではなく、見廻組で生きる朱花として変わらず笑っているだけだったというのに。


椿の花は、花開くまでの期間は数年かかると言われているが、1度開花したならば長期に渡って咲きつづける花。


それを“咲くな”と言う人間が、この世に居ていいものか。

咲いた瞬間に踏みにじる人間が、この世に居ていいものなのか。



「もうとっくに……、朱花は徳川など、捨てている」



醜い執着を持っているのは徳川であって、この子ではない。

朝廷に政権をあっけなく返したような、あんな幕府など俺たちはもうどうだっていいんだ。


それでも戦っては死んでを繰り返している仲間たちがまだ居る。


こんなことをやっている暇など無いというのに、なにをしているんだ徳川幕府。



「なぜ……ここに徳川は誰ひとり来ていないんだ…、血を引いた身内に死罪なんかを言い渡しておいて……、───なぜここに来ないんだ腰抜け慶喜は……ッ!!!」


「貴様…!!将軍を侮辱するか……!!」



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