奈落の果てで、笑った君を。
たとえ負け戦と言われようと幕府のために最後まで忠誠を誓い、己の責務を全うしようと刀を持って走る者たちがまだ居るんだ。
戦場にも来ない、
この処刑場にも姿を現さない。
城の最上階で偉そうに命令だけをし、結局は政権を守れなかった天下の将軍家は、部下を守ることすらなく。
今も自分たちの身だけを安全な場所に匿っているんだろう。
「…そんなもの…、終わって当然だろ…」
見廻組も、新撰組も。
もはや幕府のために戦っているのではない。
己のため、誠のために戦っているだけだ。
「将軍を愚弄したお前の罪は重いぞ忽那。
斬首など軽すぎる、生き埋めか火炙りのどちらかに変更だ。…では次、娘にも遺言を聞こう」
ずっと黙っている朱花はもう、諦めたのだろうか。
あんなにも純粋に生きることを楽しんでいた少女が、今はただ訪れる死を待っているというのか。
どうにか朱花だけでも助けなければ。
俺は生き埋めだろうが火炙りだろうが、なんだっていい。
でも朱花だけは、……朱花だけは。
「おい、化け物の娘。なにか言い残すことはあるか」