奈落の果てで、笑った君を。
「……ああ…、っ」
そのときはまた一緒に散歩をしよう。
知らない町を、景色を、何度でも俺と一緒に見よう。
弁当を持って出かけるのもいい。
またススキの広がる草原へ行って、埋もれてしまう椿を見つけて、俺は何度だってお前を抱きしめる。
一緒に笑って、ときに泣いて、些細なことで幸せを共に感じよう。
なぜ、…なぜ、そんな“普通”すら許されないんだ────…。
手にするなど贅沢なことは言わない。
だからせめて、せめて、触るくらいは、見るくらいさせてやってはくれないか。
「しょうせいっ、しょうせい、できる…?次こそは…っ、できるっ?」
涙が止まらなくてうまく返事をすることができなかった。
だとしても、伝えたい。
これだけは本心だと、俺の想いだと、伝えたい。
「俺は、朱花がもしまた…今と同じ身体に生まれたとしても。それでもお前のことを……誰よりも愛すると、誓う」
お前のように愛情表現が得意ではないんだ俺は。
許嫁だった女がわざわざ出向いてくれても、顔を合わすことなく平気で突っぱねるような男だ。
遊郭へ行ったところで芸者を喜ばせる反応ひとつもできないような男だ。
そんな、そんな男を。
「……愛してくれて、ありがとう…、朱花」