奈落の果てで、笑った君を。
きっと、その感情だけは朱花がいちばん分からないものだろう。
俺も教えることができなかった。
それは俺ですら分からなかったからだ。
でもやっと、やっと今、俺にも分かった。
愛とは、分かろうとして生まれるものではなく。
気づけばふとしたときに感じ、これがそうなのだと、あとから気づくものなんだと。
それを知れた俺たちは、幸せだったと言うことくらいは許してはもらえないだろうか。
「戯れ事は終わりだ…!───処刑執行せよ!!」
俺の腕のなか、声をあげて泣きつづける少女。
抱きしめながらせめてもと微笑み、涙を流す俺。
四方八方から振り上げられた刀。
今日は青空が広がった、良い天気だ。
『尚晴っ、どうして空は青いの?』
『………もとから青いからだ』
『えっ、そうなの?でも夜は暗くなるよ?』
『……そういう、決まりだからだ』
『そうなんだ!』
いちばん困った質問は、これだった。
どうして空は青いのか。
どうして風は吹くのか、どうして木は揺れるのか。
どうして人間は生きるのか、命はあるのか、それと同じ意味だろうという説明が、なかなか上手くできなかった。