奈落の果てで、笑った君を。




きっと、その感情だけは朱花がいちばん分からないものだろう。

俺も教えることができなかった。
それは俺ですら分からなかったからだ。



でもやっと、やっと今、俺にも分かった。



愛とは、分かろうとして生まれるものではなく。

気づけばふとしたときに感じ、これがそうなのだと、あとから気づくものなんだと。


それを知れた俺たちは、幸せだったと言うことくらいは許してはもらえないだろうか。



「戯れ事は終わりだ…!───処刑執行せよ!!」



俺の腕のなか、声をあげて泣きつづける少女。

抱きしめながらせめてもと微笑み、涙を流す俺。


四方八方から振り上げられた刀。

今日は青空が広がった、良い天気だ。



『尚晴っ、どうして空は青いの?』


『………もとから青いからだ』


『えっ、そうなの?でも夜は暗くなるよ?』


『……そういう、決まりだからだ』


『そうなんだ!』



いちばん困った質問は、これだった。


どうして空は青いのか。

どうして風は吹くのか、どうして木は揺れるのか。


どうして人間は生きるのか、命はあるのか、それと同じ意味だろうという説明が、なかなか上手くできなかった。



< 399 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop