奈落の果てで、笑った君を。




(どうやら俺は、正しいことを教えることができたらしい)



俺がお前と出会えたことも、偶然などという言葉として片付けたくはない。

そういう決まりだったんだ。


俺が俺という生を受け、死んでいくまでに、俺たちが出会うことは確率されていたのだ。


そして俺が愛というものを知るために、朱花は必要不可欠な存在だった。



「こわい…っ、死にたくない……っ、死にたくないよ尚晴……っ」


「…大丈夫だ。俺はずっと…お前のそばにいる」



人間が絶対として捨てきれないものは恐怖。

それを教えてやれる日が、まさかこんな日だとは思いもしなかった。


朱花、覚えているか。
忘れてはいないか。


お前は最初、刀を向けられて笑っていたんだ。

それどころか自分から近づいては興味津々だった。


やはりちゃんと成長しているな、朱花。



どんなものにも執着しなかった少女が、最期、───…生きることに執着していた。



切られれば赤い血が流れ、傷つけば塩辛い涙が流れる。


お前は人間だよ。

誰がなんと言おうと、普通の人間なんだ。



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