奈落の果てで、笑った君を。




人と人の繋がりというものは不思議だと思った。


これが縁というものだろうか。

どこかで誰かが操作しているのか、はたまた神様というものが本当に存在して、わたしを助けてくれたのだろうか。


ただ、わたしは今、生きている。



「尚晴、だいじょうぶ…?」


「ああ、少し痛むが……、平気だ」


「これからどこへ行くの…?」


「もう誰も追っては来ない。とりあえずは…休めるところを探そう」



私物と共に解放されたあとは、奉行所から離れて肩を組むように歩いた。

傷だらけでボロボロな尚晴から伝わってくる痛み以上に、身体を寄せると感じる鼓動。


それがわたしたちに前へと進む勇気を与えてくれる。



「…だいぶ日が暮れてしまったな」


「うん…、───…わ、すごいきれいだよ」



見覚えがある風景だった。

わたしはこの場所を知っている。


この世でいちばんの太陽を拝められる、この丘を。


朝は黎明、夜は月下、今は黄昏。



「ここ…、ずっと前にも…ひとりで、来た」


「……朱花、」



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