奈落の果てで、笑った君を。
「ここは……どこ…?」
こんなにも明るくて心地いい室内は初めてだ。
木漏れ日のような温かさと、すべてのものから守られている安心感。
「…ここは壁も屋根もある場所だ」
「…橋も…いいところだよ」
「そうか?風邪を引いているように見えるがな」
へにゃりと、笑顔を作った。
いつもどおりには息が吸えないけれど、こういうときは言わなくちゃいけない言葉がある。
「ありがと…。おせわ…に、なりました…」
昨日はどうなったんだっけ…。
すごくふらふらして、頭が痛かったの。
「まだ世話は終わっていない。とりあえず体力を回復させることだけを考えろ」
「……うん」
ずっと身に付けていた着物の肌触りでは無かった。
かけられていた布団を少しだけ浮かせて確認してみると、ずっと着ていたものより素材も厚く、模様も違う。
「あれ…?ぼくの着物は……?」