奈落の果てで、笑った君を。
視線を移してみると、ハッと何かを思い出したように、ぷいっと顔を逸らされてしまった。
昨日も似たようなことをされた気がする。
「…ずいぶんと汚れていた。今は洗ってる」
「そっかあ…、ありがと尚晴」
身体も心なしか綺麗になっている。
髪もバサついていないし、まるで汚れていた全身をくまなく拭いてくれたみたい。
「……ちなみに…、み、見ていないから安心しろ」
「なにを?」
「っ…、いや、別に、その…、ちゃ、ちゃんと目隠しはした…!」
「メカクシ?どうして?」
「ど、どうしてって…」
布団に寝かせられながらも続きを知りたくて見つめてみる。
あっけに取られたように考え込んでから、降参したように無音のため息を吐いた尚晴。
「…そうだな、お前はそういう奴だった」
「ふふっ」
無表情で口だけを動かしたり、かと思えば顔を赤くさせたり、今度は柔らかく眉を下げたり。
そんなコロコロ変わる表情がすごく面白くて、また笑ってしまった。