奈落の果てで、笑った君を。
勘が鋭いというか、おちゃらけているようで周りをよく見ているところは俺よりも人生を重ねているだけあると思う。
「わざわざ故郷から京に一緒について来てくれたんだっけ?なんていい子なんだ」
「…違う。たまたまハツネの親族が京に居ただけです」
俺の言い訳など見透かされている薄ら笑いが反響した。
それにしてもこの男の情報網は一体どこにあると言うんだ。
人の懐(ふところ)に入るのが得意だと常に豪語している早乃助という男は、俺と正反対すぎて苦手どころか嫌いの部類に値する。
「それなのにまったく君という男は。許嫁がいるにも関わらず別の女の子を拾ってくるだなんて。くははっ、ほんと最高すぎるって尚晴」
────ザバッッ!!
どちらにせよこの男の笑いものにされたことには変わりない。
それがどこか悔しくて、湯船から湯がこぼれ落ちては虚しくさせるくらい、わざと立ち上がる。
「わー…、えっ、いつもそんなご立派なものぶら下げてたんだ?そりゃあハツネちゃんも追いかけるわけだわー」