奈落の果てで、笑った君を。




見上げるそいつは、俺の鍛え抜いた上半身からスーーっと下半身まで視線を戻しては下品極まりない反応をした。



「あ、怒った?ごめんよー」



やはりこいつなんざと入った俺が馬鹿だったんだ。


風呂を出て、瞬く間に着替える。

そして向かうは自室なのだが、到着する前には楽しそうな笑い声が聞こえてきた。


不思議だ、本当に不思議で仕方がない。


あの笑顔を見るだけで、己のなかにある不安や恐れ、迷いが一切と言っていいほど消え失せる。



「おいしい!これっ、これすごく好き!」


「味噌田楽だね。そこまで喜んでもらえて良かったよ。豆腐はいろんな調理方法があるから───っと、忽那くんのお帰りみたいだ」


「尚晴!」



まだ昨日出会ったばかりだというのに、ずっと一緒に居たような感覚さえもする。


なれど飽きることはないのだろう。

と、思わせてくるのだこの娘の笑顔は。



「尚晴これ知ってる?あのねっ、オミソが乗ってるの!えっと、この白いふわふわに!」


「お豆腐、って言うんだよ」


「そう!おとーふ!」



< 67 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop