奈落の果てで、笑った君を。
初めての雪
「えっと、こっち!いやっ、違った!あっち!」
ずんずん進んで、心のおもむくままに進んで。
は、いいものの。
どこを通っても初めての道ばかり。
山道とは違って複雑すぎる造りの路地裏や曲がり角は、もとから備わってもいなかった方角というものを狂わせた。
「ごめんなさい。あのう」
見知らぬ人間に声をかけることに対して躊躇ったことだけは無い。
そこに恥じらいもなく、わからないから聞いただけ精神で生きている自分は、今も横を歩いていた人の良さそうな年上の女に尋ねた。
「ごめんなさい…?ふふ、ごめんくださいやなくて?」
「ごめん、ください?」
「せや。尋ねるときはそう言うんやで」
ごめんなさい、と、ごめんください。
使い分けの仕方がまだよく分からないけれど、それは帰ったら尚晴に聞こう。
「大きな橋に行きたいの」
「大きな橋…?ああ、せやったらこの先をずっと進んでいったら見えてきはるわ」
「ありがと!」