奈落の果てで、笑った君を。
ここがサンジョならば、また戻らなければいけない。
そうこうしているあいだにもおじいさんは死んでしまうかもしれないのに。
そう思いながら肩を落として歩いていると、ドンッ!っと強めにぶつかっては跳ね返る。
「あっ、わりーな!……って、お前!!!」
聞き覚えのある声。
そこまで変わらない背丈のわりに、犬のようにキンキンと響く音色は。
「へーすけ!!」
「はあ!?お前なんでまたここに来たんだよ!!」
「ニジョの橋に行こうとしてたの!」
「ここはどう見ても三条大橋だろ!」
今日は空色の羽織は着ていないみたいで、こうしてぶつからなければ気づかないほど町人に溶け込んでいた。
「オレ今日せっかくの非番なのに…」
そんなへーすけは絶望感あふれる顔をしてから、わたしの背中をポンッと押す。
「とりあえず来いよ。たぶん二条大橋だろ?近くまでなら案内してやるから」
「ありがと!これあげる!」
「……いらねーよ」