奈落の果てで、笑った君を。




流れ作業のように着物の懐から取り出した銭貸。

けれど彼は首を横に振って、わたしを誘導させた。



「んで、お前あれからどうなった?」


「尚晴に助けてもらった!」


「しょうせい?誰だそいつ」


「あとはノブちゃんのご飯を食べてっ、ふかふかのお布団で眠ってっ」



そこまで説明したところで、隣を歩いていた足取りが動きを止めた。

つられたように振り返って、少し先できょとんと目を丸くさせる。



「ノブちゃん…、もしかして今井 信郎のことか!?」



と、すぐさまへーすけは笑顔で向かってきた。



「うんっ、ノブちゃん!」


「まじか!!お前ほんとに見廻組に近づいたのかよ!あの堅物集団に!?はははっ、すげーって!!」



なにがそんなに面白いんだろう?

わたしの肩をガクガクと揺らしてまで喜んでいるへーすけ。



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