奈落の果てで、笑った君を。
ふたりで一部屋。
屯所はそこまで部屋数も多いわけではなく、一人部屋は逆に珍しい。
ただ他の隊士たちと雑魚寝というのは女の子であるわたしには避けさせたいところだと、ノブちゃんは言っていた。
そのため、わたしは尚晴と同室として生活していた。
尚晴は表面上ではわたしの“世話役”だと、周りの隊士に話を通しているんだと。
「危ないって、なにが?いろいろって?」
「その…、男が、動物になる」
「えっ、そうなの!?全身に毛が生えるってこと!?」
「いやそういう意味ではなく、……、」
なにかを言いかけて、やめられてしまった。
押し入れから取り出したふかふかの布団を並べて敷くことが寝る前の日課なのだけど。
必ず“びょうぶ”というものを尚晴は挟んでくるのだ。
「朱花は無くても平気なのか」
「うん。だって尚晴の顔が見れなくなっちゃうもん!」
「……やはりこれは必要だ。まだ、必要だ」
「まだ?じゃあいつかは外してくれる?」
「…そのときが…来たら」