奈落の果てで、笑った君を。
「約束だよ?」と言うと、間を空けた「…ああ」が返ってきた。
いつだろう。
できれば早めがいいな…。
夜が危ないなら尚更、お互いの顔を見えるようにしておいたほうが安心だと思うのに。
「あっ、そうだ!尚晴、これっ」
「……お前が受け取ったのか」
「うんっ!ハツネ?っていう女の人からだよ」
本当はもっと早くに渡す予定だったのに、すっかり忘れ呆けてしまっていた1枚のお手紙。
昼間、この場所を訪れた初めて見る女の子から尚晴へとお願いされたものだった。
そのとき尚晴はジュンサツに行っていたから、たまたまわたしが受け取ったんだっけ。
「尚晴……?」
手にしたはいいものの、開こうとしない。
誰かから渡される贈り物というのは、とても嬉しい気持ちが溢れる。
けれどこれは彼にとってそうではないのだろうか。
「…あとで見ておく」
そう言って、畳まれた袴の上にサッと置いてしまった。