くるくるキャンディー
私はLOUISにさらなるお願い事をした。
「LOUIS、今回のショーではイメージカットをいっぱい使用しようと思っています。カットはあなたと私のカップルだけ。日時を調節して横浜辺りで撮影したいと思うのですが、お願い出来ますか? 撮影は1日終日と考えています。事務所側には私から連絡を入れておきます。」
「いえ、事務所には僕から言っておきます。」
珍しくLOUISが口を開いた。
「そうですか、ではよろしくお願いします。」
いつものことながら、言葉少なに頭をペコッと下げて彼は帰っていった。
私は彼の態度に物足りなさを感じた。でも今そんなことに気を取られている場合ではない。時間が無い。
「あの、社長、“ALISA”ブランドの花岡さんから、横浜でのスチール撮影依頼がありました。」
LOUISはマネージャー兼LOUISの所属するこの事務所の社長高岡に報告をした。
「おい、LOUISその仕事受けたのか? 」
「はい。」
「おいおい、勝手に何やってる。お前、トップブランドからショーのオファーが来てるんだぞ。そんなことしている暇はない。その花岡とやらのファッションショーだって断りたいくらいなんだ。これからトップブランドのフィッティングやショーの練習やら、スケジュールが入ってくるというのに・・・」
「あー・・・でもこの仕事だけはやりたいので・・・」
「ダメだ。俺が断る。」
「なら、ここ辞めます。」
「はっ? 何言ってんのお前・・・いやいや、待て。まったくどうしちゃったんだよ。普段はこんな我儘言わないのに・・・」
「・・・この仕事だけはやらせてください。その後は何でもしますから・・・」
「何だか知らないけど、こんな無名のデザイナーのショーなんて・・・もったいない・・・トップブランドだぞ。モデルで日本人はお前だけだ。そのショーに出れば一気に名声を手に入れることが出来る。世界中から注目されるんだぞ。」
「いえ、すみません。これだけはやらせて下さい。やらせてもらえないなら・・・」
「わかった、わかった。フー・・・いくら言ってもダメそうだな。わかったよ、LOUIS。それならその仕事思いっきりやって来い。その後はしっかり仕事してもらうからな。」
LOUISは高岡にペコッと頭を下げた。
高岡は呆れて大きなため息をついた。