クールで一途な後輩くんと同居してみた
💛十年片思い


 じわじわ蝕む暑さと、小鳥のさえずりで目が覚める。


 時計を見たら早朝五時。夏休みに入っても体内時計は相変わらず。


 まだ誰も起きていないのか、家の中はシンと静まり返っていた。


 横には、もう二人分くらい布団が置けそうな距離でスイくんが寝ている。


 昨夜は結局なにも起きなかった。


 起こせなかった。


 未だ私に背を向けているスイくん。



 そうだ、寝ぼけて抱き付いてきたの……私もやってみようかな。


 スイくんの気持ち、わかるかもしれないし。



 気付かれないように隣に転がる。


 前に手を回すのまでは勇気がなかったから、少し体を寄せて引っ付けた。


 あったかい。


 ……ドキドキ、する。


 だめだ、全然わからない。


 できればこのままずっとくっついていられたらいいのに、って私が思うだけ。



「……スイくん……」

「なに……」

「えっ」



 お、起きてた!?



「んん……」



 もぞもぞと身じろいで、スイくんが寝返りを打つ。


 顔が、近い。


 スイくんはすやすや寝息を立てている。


 ね、寝言だった。なかなか目を覚まさないところは変わらないみたいだ。


 夏休みに早起きする理由はないもんね。


 もう少し寝かせておこうと決め、身を起こそうとした。



「だめ……」

「んぇ!?」



 突然、腰をぐっと引き寄せられる。


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