クールで一途な後輩くんと同居してみた





「行きましょうか、緋織先輩」

「うんっ」



 長い階段の先、神社の鳥居をくぐって一歩。


 提灯が照らす淡い光の下を二人で歩く。


 芳しい屋台に誘われてふらふらと体が傾くと、手首を掴まれた。



「あ、ごめん!」

「はぐれないようにしましょう」

「そうだねっ!」



 それが当然かのように繋がれた手に引かれる。


 スイくん、覚えてるのかな。


 私達って手を繋ぐと恋人に見えるらしいってこと。


 こういうのも……今日で最後にしなきゃな。



 四人分の夜ご飯を買ってきてね、というスイくんのお母さんからのおつかいにより握らされたお金を使っていく。


 定番の焼きそばやフランクフルト、デザートとしてベビーカステラ等を袋に入れて腕にぶら下げる。


 小規模のお祭りだから屋台も少なく、短時間で全てを回れそうだった。



「食べ物はこんなものですかね。少し遊んで行きますか?」



 スイくんが指差す先には射的の屋台。



「いいね! 勝負しよっ!」



 銃に詰めるコルクは一回五個まで。


 どうせなら難しそうなものを、と思って大きな箱のお菓子に狙いを定める。


 とりあえず一発。少しだけ後ろにずれてくれた。


 当たれば順当に動いてくれるなら話は早い。一点に集中して当て続け、やがて落とすことができた。



「やったーっ!」

「おめでとうございます」



 始めてやったけど楽しいかも!


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