クールで一途な後輩くんと同居してみた
話を終えて顔を上げる。
お母さんが隣で微笑んでいた。
あっちはあっちで話かけて、私より先に済ませていたみたい。
お父さん、これからは二人同時に話を聞かないといけなくなっちゃったね。
「随分話し込んでいたのね」
「えへへ……言いたいこと、全部言ってやったっ!」
「いいんじゃない。何言ったって向こうは反論できないわ」
「だよねっ」
じっとお母さんを見つめる。
「ん? なに?」
「あのねっ……」
お父さんのことを知るためには、一番お父さんのことを知ってる人に聞くのがいい。
緋色の織を渡したとき、本当はお母さん、そういう話がしたかったんだと思う。
逃げててごめんなさい。
数年越しだけど、まだ聞かせてもらえるのかな……?
「暑いから、冷たいものでも飲みながらお母さんと喋りたいなっ!」
お母さんが頷くのを見て。
後ろに手を伸ばす。
「――行こっか、緋織」
「……、うん」
明るい太陽が照らす、その足元。
くっきりと濃い影に向かって、私は言った。