クールで一途な後輩くんと同居してみた




 戸締まり、よし。


 換気中だった窓を閉め、昨日から自分の部屋となったこの場所を見渡す。


 どうしても目に付くのは、天井スレスレまである大きな本棚だ。


 試しに一冊抜き取って開いてみるけど、小難しい内容に目が滑る。


 わかるのは、どの本も保存状態が良いということだけ。


 きっと、読まずとも大切に管理されてきたのだろう。



「スイくーん! 準備できた?」



 コンコン、ノックの音がした。


 ちゃんと昨日言ったことを守ってくれているらしい。


 彼女はいささか……危機感が足りないと思う。


 というより、俺のことを男として意識する発想すらないんだろうな。



「……お待たせしました」

「わ、あ……っ!」



 廊下に出た途端、彼女が感嘆の声をあげた。


 俺を見上げて目をキラキラさせている。


 は? なに? 可愛いな。


 抱き締めやすそうな身長差だ。


 こうしてまっすぐ対面したことがないから知らなかった。



「……なんですか」

「あのねっ、スイくんってなんていうか
……いいよね!」

「は、い……?」



 ほんとに何?


 いちいちときめいて苦しいからあまり喋らないでほしい。



「つまりね――かっこいい!」

「……な、」



 無邪気に明るく。パッと笑顔が向けられる。


 俺に。


 俺だけに。


 やっ……、



「……やば、」

「へ?」

「もたもたしてないで早く行きますよ」

「あっ、うん!」


< 13 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop