クールで一途な後輩くんと同居してみた
彼女の家から俺達の通う高校は、徒歩五分ほどの近さである。
だからこそ同居は頼みやすく、承諾されやすかったのだろう。
少し歩けばもう校舎が見えてきた。
グラウンドに植えられた桜から、花びらがはらはら舞い落ちている。
「今ちょうど満開の時期かも! 入学式には結構減ってそうだから、今日寄ってみてよかったねっ!」
そう言いながら、彼女は落ちてくる花びらを掴もうとぴょんぴょん跳ねていた。
俺も真似してみようと手を上げた瞬間、風が吹いて手のひらに花びらが貼り付く。
そのまま拳を握ると、簡単に手に入ってしまった。
「えーっ! すごい! スイくん、花びらにまでモテモテなんだ!」
「……たまたま、です」
こんな風に手に入れば楽なのに。
「おーい! 緋織ーーっ!!」
遠くから、彼女を呼ぶ声が聞こえた。
グラウンドの方からだ。見れば野球部のユニフォームを来た男がこちらに手を振っている。
「あ、大ちゃん! 春休みも練習?」
大ちゃんとやらは軽快に駆け寄って来ると、彼女とフェンス越しに話し始めた。
「おー! 緋織もまた今度練習付き合ってくれよ」
「うんっ、いいよー!」
「あいつら、緋織がいるのといないのとじゃ
やる気が全然ちげーからさー」
「しょうちー!」
「ところで……」
『大ちゃん』が俺に視線を動かす。