クールで一途な後輩くんと同居してみた
💛藍月緋織伝説
「ふうん、あれが例の『スイくん』ね」
「さっそくモテまくってんな」
どこから取り出したのか、双眼鏡を覗き込んで窓の外を見る友達二人。
先日入学式を終えたばかりの新入生は、毎朝校門前で部活勧誘を受けるというのが我が校の恒例行事だった。
その新入生の中に、スイくんも入っている。
二年の廊下から見る校門前の様子は、例えるならアイドルの握手会みたい。
新入生一人に対して二、三人……多い人なら五、六人の生徒が群がっている。
スイくんはというと――
「ご、ろく、なな、……じゅ、じゅう、じゅうに!? 今年度の最高記録だね、十二人は!」
「そうね。まぁ『藍月緋織伝説』が何を言ってもしょぼいんだけれど」
「『藍月緋織伝説』は記録更新されずだな」
「ねえええ! その呼び方やめてよおっ!」
二人の肩を掴んで窓際から剥がした。
スイくん観察禁止令発動!
「肩脱臼した……野球部なのに……」
「しないよ大ちゃんっ!」
「そんな……次期キャプテン候補の肩を……なんてこと、緋織……」
「しぃちゃんも! そんなに強く引っ張ってないっ!」
クスクス笑ってからかってくるのは大ちゃんと、しぃちゃんこと詩歌ちゃん。
しぃちゃんは双眼鏡をスカートのポケットに戻すと、大人っぽく妖艶に首を傾げた。