クールで一途な後輩くんと同居してみた


 私の肩とスイくんの胸がぶつかった。正直に白状すれば、ぶつかりに行ったが正しい。


 反動で跳ね返され、後ろへと重心が揺れる。


 倒れないために、近くにあった掴めるもの――スイくんの腰に手を回してしがみつくことにした。



「は、なに、なん、……っ、緋織せんぱ、」

「そ、その部活だけは、名前も言っちゃだめだよっ……!」

「いやなんで抱き付いて……、は、離れ……なくても別にいいですけど……」

「っ! しーっ、スイくんこっちっ」



 そのままグイグイと押していき、手近な教室へと身を隠す。


 壁と私でスイくんを挟んだ。


 廊下では、複数の足音がバタバタ響いている。


 あの部活は、とにかく嗅覚が鋭いんだ。自分達の話題をしている人を見つける能力が高いから、むやみに話すと痛い目を見る。


 だからもしかしたらこの足音も……と、耳に全神経を集中させていた。


 いた、ら。



「あー……、っ、も、むりだ……」



 ぎゅう。


 スイくんが、強く抱き締めてきた。


 私の体はスイくんの中へすっぽりと収まってしまう。



 ……えっと。


 これは、何?



「ぐ、具合悪い、とか?」

「べつに」

「あ、お腹空いた?」

「……べつに」

「う、うぅん……?」



 どうしたらいいの?


 べつに、しか言わなくなってしまったよ。


 私の肩に顎を乗せているから、スイくんの表情は全然見えない。


 どういう気持ちでこんな行動を取ったのか、理解できなかった。


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