クールで一途な後輩くんと同居してみた


 彼の意外にも高い体温とか。


 柔軟剤やシャンプーは同じものを使っているはずなのに、私とは違う匂いとか。


 そういうものがやけに印象に残る。


 ……まるで、



「すみません。なんかちょっと……立ちくらみがしました」



 何もできずにいたら、スイくんから離れてくれた。ふっと体が軽くなる。


 え! やっぱり体調悪かったんだ!?



「今日はもうやめにする?」

「大丈夫です。行きましょう」

「ま、待って!」



 シュバッとドアの外へ聞き耳を立てる。足音はいつの間にか消えていた。


 よしよし、行こう!


 ドアを開けて一歩踏み出したところで。






「でもそんなに危険なんですか?

――新聞部って」






 あ、言っちゃった。



 スイくんが確認もせずにパンドラの箱を開ける。


 瞬間、耳元で風を切るような低い音がして。


 私とスイくんの間に、



「呼んだな?」



 にっこりと目を細めた、人の顔が浮き出てきた。


 でっ、出たああああああああっ!!


 バクバクバクバク! 心臓が飛び出る勢いで爆音を鳴らす。



「スイくん、逃げよっ! 逃げるよっ!」

「逃がさへんで?」

「ほぎゃあぁぁっ!?」



 スイくんの腕を掴もうとした手を先回りして持ち上げられる。


 元気よく手を挙げる構図になってしまった。



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