クールで一途な後輩くんと同居してみた


 だけど成世先輩はそれをひらりとかわし、スイくんの手は空を切ってしまう。



「なんやキミ、お楽しみ邪魔されて怒ってるん?」

「緋織先輩が迷惑そうにしてるから、怒ってるんです」

「じゃあ三人でするか~。部室やったらみんな出払ってくれるし、行こか」



 あああ噛み合ってないいぃ……っ!


 私もさっきから自力で拘束を解こうと抵抗してるんだけど、私の手首が痛くなるばかりで疲弊だけが募っている。


 一度成世先輩に目をつけられれば、タダで逃げ延びることは難しい。


 成世先輩に手を引かれて体が勝手に付いていくのに、私は従ってしまおうかと気力をなくしていた。



「っ、やめて、ください!」



 でも、スイくんは諦めていなかった。


 私のことを後ろから抱き締めて、成世先輩の歩みを止めてくれる。



「……二人が、いいんです、俺は」



 ぎゅっと、もう一段階強く閉じ込められた。


 ……そうだよね。


 スイくんがここまでしてくれてるのに、私が諦めてちゃ、ダメだよね。


 成世先輩の手枷が付いたままの手首を、上から下へ振り下ろす。


 が、衝撃が来る前にパッと手が離れた。


 ……へ?


 驚いて顔を上げたそこには、



「なんや、良いネタ持ってるやん自分」



 好奇心をスイくんへ移した成世先輩がいた。


 悪いことが起きそうな予感がじわじわ広がっていく。


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