クールで一途な後輩くんと同居してみた





「最悪です」

「ハイ、ゴメンナサイ」



 帰宅して最初に行われたのは、二度目のお説教だった。


 リビングのソファに座るスイくんの足元で、私が正座している。


 場所が違うだけで完全に前回と同じだ。



「色々、言いたいことはありますが……」

「な、なんなりと」

「おんぶが一番(しゃく)に障りました」

「……ハイ」



 やっぱりそれも入ってたかぁ……。



「俺だってできますから」

「?」

「……緋織先輩を、おんぶ。なんならお姫様抱っこまで」

「私もスイくんをお姫様抱っこできるよ!」

「競ってほしいわけじゃないんですよ」

「ゴメンナサイ」



 睨まれてしまったよ。


 先に競ってきたのはスイくんなのに……。



「……まぁ、緋織先輩が新聞部を危険視する理由は十分わかりましたから、俺の怒りはここで抑えます」



 あ、ありがたき幸せっ……!


 頭を垂れて感謝を伝えていると、「緋織先輩」と名前を呼ばれた。


 顔を上げれば、スイくんはソファの隣をポンポンと叩いて私を見下ろしている。


 隣に座ってもよろしいということでしょうか!?


 お言葉に甘えてっ!


 ポスンッ、お尻を預ける。ソファは柔らかく受け止めてくれた。



「……なんでそんな無防備なんですかね」

「ん?」



 小さくて聞き取れなかったな。


 聞き返すときに体をスイくんの方へ傾けてみたら。


 なんと、肩を軽く押し返された。


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