クールで一途な後輩くんと同居してみた


 え。


 なんとなく、拒絶されたかもなって感じた。


 か、簡単におんぶしちゃったの、そんなにショックだったのかなっ……!?


 これで関係が悪くなったらどうしよう!



「あっ! 私、スイくんをお姫様抱っこはできるけど、そのままスクワットは難しいかもっ!」

「はい?」

「なんでもないです」



 励まし方を間違えました。


 私に力勝負で負けるのが嫌なのかなって思って言ってみたけど、こういうことではないよね。


 それに、スクワット本当はできるかもしれない。



 ……チク、タク、チク、タク。



 遂に二人とも黙って、時計の針を刻む音だけになってしまった。


 私はソファで膝を抱えてうずくまっている。


 大丈夫だよね。明日になったら、元に戻ってるはず……。


 自分の部屋に行って落ち着こうかと思って、立ち上がろうとした直前。


 急に、スイくんの手が横から現れた。



「手。出してください」

「え?」

「手」

「は、はいっ」



 ……腕相撲でもするの?



「腕相撲じゃないですからね」



 私の思考、バレバレだった。


 じゃあ、なんだろう?


 言われた通り、スイくんの隣に並べるように手を出す。


 握手かな……と最後の考えも、一瞬で覆された。


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