クールで一途な後輩くんと同居してみた
💛知りたい『好き』
「こらおまえら! いきなり藍月のところへ並ぶんじゃない! まずはピッチングマシンで肩慣らししてからだ!」
今日の野球部は、バッティング練習が主らしい。
ピッチングマシンに並んで私がピッチャーとして立っていた前には行列ができていたんだけど、コーチの叱咤によりまばらになっていく。
ついには誰もいなくなった。
「緋織……待ってる間オレとキャッチボールしとけって、コーチが」
大ちゃんが苦笑しながら話しかけてくれる。
私は頷いた。
だけど心の中は、もやもやザワザワ。落ち着かなくて仕方なかった。
……スイくん、まだかなぁ。
まだ全然時間は経ってない。気が早いのはわかってる。
でも今だけは一秒がすごく遅く感じて、どんどん不安だけ募っていく。
新聞部に入っちゃうのかな。
成世先輩の、後輩になっちゃうのかなぁ!?
うぅー、やだよぉ。私の後輩だったのにっ!
「大ちゃんっ! どうにかスイくんも部活免除にすることできないかなぁっ!?」
「やー、無理だろー。緋織はマジで特殊すぎただけだから」
「くううううっ!」
心のわだかまりをぶつける勢いでボールを投げる。
スパァンッ! と気持ちの良い音を立て、大ちゃんは受け止めてくれた。
大ちゃんくらいだよ、私の本気ボールを落とさずにキャッチしてくれるのはっ!