クールで一途な後輩くんと同居してみた



「まずですね、ノックをしてください。俺にもプライバシーはあります」

「……ハイ」

「例えば、そっちが着替えてるとき急に俺が入ってきたら困りますよね?」

「ハイ、コマリマス」

「だから突然来るのはやめてください」

「ハイ、ゴメンナサイ」



 同居初日に年下から説教されてる年上……なんて惨めなの?



「それから、」



 あぁお……まだ続くよ。


 そりゃそうだ、『まず』って最初につけられてるんだから。


 国語が正しくてツラいよ。



「男に寝ようなんて誘って、何を考えているんですか?」

「あの、ちが、ちがうくてぇ……」

「何が違うんですか。勘違いされても擁護(ようご)できないですよ」

「えっとぉ……」



 言い訳する先輩って、めちゃくちゃダサいね……。


 でもこれは解かないといけない誤解だから、先輩としての面子が多少潰れても受け入れなきゃだ。



「二人でじゃなくてね? 私とスイくんと、お母さんの、三人で……川の字的な……ね? やつがしたくって……」

「……は、」

「完全に浮かれておりまして……大変申し訳なく思っております……」



 スイくんの顔が見れない。


 絶対に汚物を見る目をしている。


 私は流れるように体勢を土下座へ移行した。


 プライド……ゼロッ!


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