クールで一途な後輩くんと同居してみた
「っあ……す、すみません」
「へへ、いいよっ! 帰ろっか! みんなに挨拶だけしてくるねっ!」
「……はい」
スイくんに背中を向けて大ちゃんの元へ戻る。
つもりだったけど、突然スイくんに手を握られて止まった。
「ん? どうかした?」
私の問いかけにスイくんは答えることなく、流れるように指を絡ませてくる。
……あ、何か、感じること。
反射的に考える。
スイくんはこの行動で何を感じてほしいと思っているのか。
解答は出なかった。
「……このまま行きましょ」
手を繋げたまま、大ちゃんのところへ連れていかれる。
なんか……いいのかな?
あんまりよくないことをしているような。
でも、なんでよくないのか理由はわからなくて、付いていくことしかできない。
手を繋いだ私達に、大ちゃんは大きなリアクションをして。
「おぉえ!? いつの間にか付き合ってる!?」
騒ぎにぞろぞろ野球部のみんなが集まってくる。
「なんだ、緋織伝説の彼氏?」
「マジ? おまえら緋織伝説の彼氏来た!」
「彼氏降臨!? うお、すげー!」
え、彼氏じゃない、けど……。
そっか。相手が私でもそう見えるものなんだ。
じゃあ離さなきゃ。
「あ、あれ?」
離れない。スイくんの握る手が固くて全く解けそうにない。
え、え? なんで?