クールで一途な後輩くんと同居してみた
💛緋色の織
――早朝。
そっと、現スイくんの部屋を開けて覗き込む。
静かに寝息を立ててベッドに横たわるスイくんへ、抜き足差し足で近寄って。
寝顔をよく観察した。
思わずため息が出そうなほど綺麗な顔。
無防備な姿はお父さんとまるで違う。お父さんはベッドではあまり眠らなくて、机に突っ伏して寝落ちすることが多かったから。
スイくんはお父さんとは違う。お父さんとは違う。
自分に言い聞かせ、彼を目覚めさせるために肩に触れようとして……。
枕の隣に置かれた一冊の本が、目に留まった。
「あ……。これ、は」
「んん……?」
「っ! す、スイ、くん?」
起きちゃった?
もちろん起こすつもりだったけど、それよりも本が気になって目が離せない。
「……ひおりせんぱい、だ」
「――っへ!?」
意識を一点に集中させていた私は、スイくんが私の腕を掴んだことに気付くのが一歩遅れてしまった。
バランスを崩してベッドの上に倒れ込む。
「ふ……、なにこれ、さいこー……」
舌の回っていないふにゃふにゃの寝起き声で話しながら、私のことを胸の中に閉じ込めるスイくん。
頬を頭に擦り付けられているような。
完全に寝ぼけてる、よ、ね。
スイくんって、朝弱いんだ。
実際そんな気はしてたけど……。
もう少し寝かせてあげたいとは思いつつ、今日のところは起こしておきたい。
約束は、約束だから。明日からどうするかは、目覚めてもらってから決めよう。