クールで一途な後輩くんと同居してみた
軽くスイくんの胸を叩く。
「スイくん、起きようっ? ラジオ体操するんだよねっ?」
「んー……」
「おーきーてっ! ねっ、初日から諦めるのはよくないよっ!」
「やぁだ……」
抵抗するようにスイくんが足を絡ませてきた。
これじゃ自力で抜け出すのは難しくなっちゃった。
なおさら起きてもらわないとっ!
「おれ、ほんきだすってきめたんです……」
「だよねっ!? 本気出して目開けて!」
「ひおりせんぱい……す、…………ん?」
ドアをノックする要領で小刻みに叩いていると、スイくんが突然目を大きく開く。
「あっ、起きた!」
「え?」
「ラジオ体操の時間だよっ!」
「は?」
「あれ……起きてる、よね?」
「幻覚?」
「現実っ!」
……。
…………。
………………。
そんな数秒の静寂が過ぎ去った、次の瞬間。
「なぁっ、っ……! す、すみま、せっ……!」
顔を真っ赤にしたスイくんが勢いよく私から離れて、壁に背中を打ち付けた。
バサバサと棚から本が落ちる。
「い゛っ……!」
「だ、大丈夫!?」
「大丈夫! です! 本も片付けておきます、ので、先に行っててください」
全力の拒絶。
必死さが伝わった私は「う、うん」とベッドから抜け出してスイくんの部屋を後にした。